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陸軍(1944) [映画]

【福岡版東京物語】
東京が舞台ではないのだが
親と子の関係が離れていく様子を
悟りに似た前向きな諦観と無常観でもって
静かに丁寧に描いている点
主人公が笠智衆で
出演に東野栄治郎や杉村春子がいる点
そして、申し訳ない
福岡出身の私にとって
戦中とは言え、里の懐かしい風景や
言葉遣いを味わうことができる「ふるさと映画」的な点で
「東京物語」みたいな映画だと感じたのだ

大手門付近?の電停
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私は数十年後に同じ軌道を通学に利用していた

旧日本生命保険株式会社九州支店(福岡市赤煉瓦文化館)
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いま妹が軽のハンドルを毎日のように切っている
辰野金吾によるこの赤煉瓦館の角を
「あの」ラストシーンの冒頭で
「あの」田中絹代が駆け抜けていく場面では
鳥肌が立つ思いである

【東野栄治郎】
カッカッカと高笑いする黄門様のイメージしかなかった私には
この映画での、特に目の表情の変化で
親の心情を表現した東野の芝居力には驚愕した
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しかも、文字通り陸軍による国策映画でありながら
ちょっとしたボケ役をこなしていて
笠智衆とのコンビネーションが
戦後の「東京物語」を彷彿とさせる
その「東京物語」において、東野の役と再会した笠の
「東京で会うとは思わなかった」というセリフがあって
戦中の「陸軍」での両者の関係を知っていれば
ああと勝手に思い当たるのである

【ラストシーン】
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「東京物語」の元ネタである「明日は来らず」で
鮮やかなラストシーンに感激した私だが
それに負けないくらい、この『陸軍』のラストシーンも凄い
田中絹代が「日本映画史を代表する女優」と言われる理由が
一目瞭然である
主役を取られた笠も、東野もそうだが
セリフや仕草に頼らずとも
長尺な中で集中力を切らさせない
密度の濃い表現力は圧巻だ


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